てんかん   

INDEX

 

  1.てんかんとはなにか
  
2.てんかんの歴史
  
3.疫学
  
4.てんかんの分類
  
5.発作型
  
6.発作以外の症状
  7.治療
  8.生活指導
  9.服薬終了
  10.てんかんと間違いやすい疾患

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 てんかんは、精神症状を合併するものが少なくなく、昔から精神科で扱われている(最近では小児科や神経内科でも扱われるようになってきた)。

 


1 てんかんとはなにか   

 WHO国際てんかん用語委員会によれば、てんかんとは、
「種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって、
大脳ニューロンの過剰な発射から由来する反復性の発作(て
んかん発作)を主徴とし、それに差異に富んだ臨床ならびに
検査所見表出が伴うものである」となっている。
 一般的にいえば、発作性に来襲して、発作が過ぎ去った後
はケロリとしてなんらの痕跡も残さないが、同様の発作が時
々くり返して起こる脳由来の疾患ということになる。

2 てんかんの歴史

 てんかんの存在は昔から知られていた。

1)ヒポクラテス医学(460〜357BC)では、てんかんを「神  聖な病」としていた。
2)ギリシャ、ローマ時代
  (1)宗教的な面からは、神秘的な名称として「デウス
    の神の病」「月の神の病」などといわれた。
  (2)社会的な事件から「議会病」といわれたこともあ
    る。これは議会が開かれている最中に議員の一人が
    発作を起こしたことがあるのでその名がついた。
  (3)症状記載に相当する名称として「転倒する病」と
    いわれた。
3)近代てんかんの始祖といわれるジャクソンは、前兆やさ
  まざまな症状がてんかん由来のものであること、またそ
  の症状は脳の局所に関連していることを発見したのであ
  る(1911)。その後、脳波の発見からてんかん研究が飛
  躍的に進歩した。

3 疫学

 てんかんの発生頻度は、研究により少しずつ異なるが、概
ね0.2〜0.5%の頻度で発生する。性差はほとんどなく、原因
は表1にみられる通りである。

   

            表1 発作初発年齢による原因の順位
                 Penfield,W. & Jasper,H. (1954)

乳 児 0〜2歳 @出産障害、A変性疾患、B先天性異常
幼 児 2〜10歳 @出産障害、A熱性血栓症、B外傷、C特発性
年長児 10〜20歳 @特発性、A外傷、B出産障害
青年期 20〜35歳 @外傷、A腫瘍、B出産障害
壮年期 35〜55歳 @腫瘍、A外傷、B動脈硬化
高年期 55〜70歳 @動脈硬化、A腫瘍

 

4 てんかんの分類

 

            表2 WHO国際てんかん学会によるてんかんの分類

てんかん型 発作型 好発年令 発作以外の
  症状
 病因 予後
1.全般てんかん
a)原発全般てんかん



b)続発全般てんかん
(1) West症状群
(2) LennoxーGastaut症
  状群




(3) その他の続発全般て
  んかん
c)未決定全般てんかん

2.部分てんかん
(1) 要素性部分てんかん




(2) 複雑部分てんかん
  (≒側頭葉てんかん)



3.分類不能てんかん

定型欠神
両側汎ミオクロニー

(原発)大発作

乳幼児けい縮
強直発作
脱力発作
汎ミオクロニー
非定型欠神
間代発作
強直・間代発作
(Lennox症状群と同様)




要素性部分発作
二次性全般化部分発作



複雑部分発作
要素性部分発作
二次性全般化部分発作




5〜6歳
学童期〜
  思春期
成人以前

3〜8ヵ月


3〜5歳



不  定




全年齢
(20歳以後
も多い)


幼児〜老人
(12〜14歳
にピーク)




  −




精神・運動
機能の発達
の遅れ









神経学的
巣症状



性格障害、
知能障害を
伴うことあ




素因が主




脳のびま
ん性器質
病変、萎
縮を伴う
こともあ







新皮質
(ときに
脳幹)の
器質病変

大脳辺縁
系の器質
病変




良好




不良











病因
によ



不良





 

5 発作型

全般発作(全般てんかんによる発作)
 両側の大脳半球が最初から広範囲に興奮性変化を起こして、
全般性の発作が引き起こされる。
(1)欠神発作(アブサンス):
   突然意識が消失し、その間の反応や記憶がなくなる。
   典型例では、発作時の脳波上に3ヘルツの棘徐波結合
   を認める(小発作とよばれる)。
(2)ミオクロニー発作:
   四肢の筋(すべてまたは一部)に筋のれん縮が起こり、
   1回ないし数回くり返す。意識は障害されない。
(3)間代発作:
   全身、とくに四肢に両側性の律動的なけいれんが出現
   し、意識障害を伴う。発作時の脳波は、両側同期した
   棘徐波結合が現れる。
(4)強直発作:
   体幹、四肢筋の両側対称性の強直けいれんで、ときに
   後弓反張の形をとる。小児に多い。
(5)強直間代発作:
   強直性けいれんに続き間代性けいれんに移行するこの
   発作は、大発作とよばれる。発作時、呼吸は止まりチ
   アノーゼが現れる。ときに失禁することもある。
部分発作(焦点発作)(部分てんかんによる発作)
 脳のある一部分のみ異常放電が起こり、そのために限定さ
れた精神神経機能だけが発作として現れるものである。
(1)単純部分発作(意識障害がない部分発作):
   @運動発作(身体の一部分の運動症状だけを示すもの
   と、ジャクソン型発作といわれ、ある一定の焦点症状
   から全般型けいれんに広がるタイプがある)A知覚症
   状のみを示す発作B自律神経発作(腹痛、頻脈、顔面
   紅潮など)C精神発作(幻覚・錯覚・既視感・巨視な
   ど)
(2)複雑部分発作(意識障害を伴う部分発作):
   従来、精神運動発作とよばれていたものとほぼ同じで、
   焦点が側頭葉にあるので側頭葉てんかんともよばれる。
   もうろう状態で、食自動症(口をモグモグさせる)、
   表情自動症、身振り自動症、歩行自動症、言語自動症
   などがみられる。数分ときには数十分発作は続くが、
   発作後、発作時のことは覚えていない。
てんかん重積状態 
 全身けいれん発作が間断なく続いて起こるてんかん重積状
態の場合は、生命の危険も大きく、発作を早急に止める救急
医療が必要である。

 

6 発作以外の症状

(1)運動・感覚マヒ
(2)神経学的な異常
(3)知能障害
(4)性格障害(のろま、まわりくどさ、爆発性)
(5)幻覚・妄想
(6)内科的疾患症状
(7)脳波異常

 

7 治療

 抗てんかん薬による治療を行う。
(1)治療目標:
   患者の日常生活の支障を軽減することが治療目標であ
   る。
(2)中断なしの長期使用の原則:
   臨床発作がなくなっても投薬を継続する。急に中止す
   ると発作が生じることがある。
(3)薬量:
   できるだけ単剤で、発作が生じない最小量にする。
(4)治療中の検査:
   脳波、MRI、CT、尿・血液検査、薬物血中濃度測
   定などを行う。
(5)副作用:
   種々の副作用が起こることがあるが、もし副作用が生
   じれば長期的服用は無理なので直ちに中止する。
   副作用としては、眠気、失調、めまい、構語障害、呼
   吸循環機能障害、運動過多、骨変化、うつ症状、肝障
   害、食欲低下などが起きる場合があるが、副作用が起
   きない人が多い。
(6)発作時の対応の仕方:
   意識消失やけいれんが起きたときは、静かに寝かして
   おく。舌をかまないようにと口にものを入れたりしな
   いことが大切である。
他疾患併発時の注意
1)原則として他疾患が併発しても抗てんかん薬は中止しな
  い。
2)他剤併用
(1)抗生物質は抗てんかん薬の血中濃度を上昇させるもの
   がある(抗てんかん薬の副作用を引き起こすことがあ
   る)。
(2)抗ヒスタミン剤は眠気が増幅することがある。
(3)抗結核剤で発作回数が増加することがある。

 

8 生活指導

(1)治療方針や疾病に対して本人、家族、周囲の関係者が
   よく理解することが必要である。特に本人が自分自身
   の疾病を受け入れ、長年にわたる節制を続けることが
   大切である。
(2)飲酒・食事
   多量のアルコールや非常識な量の特定物質(コーヒー、
   コーラ、好きな食べ物など)は発作を誘発することが
   ある。
(3)睡眠
   睡眠不足や不規則な生活は発作を誘発しやすい。
(4)車の運転・職業の選択
   現在の日本では、てんかんの診断がついている場合の
   車の運転は、法律で禁止されている。危険な機械や高
   所での作業は避けるのが望ましい。
(5)スポーツ・勉学
   潜水やロッククライミングなど、発作が起きればたち
   どころに命をなくすものは避ける必要がある。水泳は
   発作の程度や種類によって十分な監視の元で行う必要
   がある。
(6)結婚・妊娠・出産
   @遺伝:てんかん患者からてんかん児が出産する確率
    は1.2%〜9.1%と報告されている(一般のてんかん
    児出産率は0.2〜0.5%である)。てんかんそのもの
    が遺伝するよりも、てんかんになりやすい体質が遺
    伝するといわれている。
   A妊娠・出産:妊娠時、出産時は発作が増加すること
    があるので十分注意が必要である。
   B妊娠時の服薬:服薬により胎児に与える影響は十分
    考慮する必要がある。夫婦での疾病や薬物の催奇型
    作用に対する正しい認識が大切である。

 

9 服薬終了

 てんかんの型によって異なる。全般てんかんで予後が良好
なものは、20歳時点で徐々に減薬して中止できるものがある。
続発てんかんは中止しない。

 

10 てんかんと間違いやすい疾患

 @不安発作(パニック発作)
 A周期性四肢マヒ
 Bナルコレプシー(睡眠発作・脱力発作、睡眠マヒ、入眠  時幻覚)
 Cヒステリー
 D症状てんかん(脳腫瘍・アルコール中毒)
 Eねぼけ、夢中遊行

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